彌助、別れの流儀

お控えなすって!
軒下三寸借り受けまして一年と半年。
約束の二年を待たず、今般、俄旅(にわかたび)に出ること相なりまして、いえ、どうか訳は訊かないでおくんなせえ。

じいやが在宅看護になりやしたこととは一切関わりねえことでござんす。

あっしとの触れ合いが少なかったと、自責の念に駆られているようでがんすが(何弁?)それは勘違いというものでござんす。

かわいい、かわいい、チュッチュチュッチュされるのはあっしらにとって迷惑至極。エサと水とたまの掃除。それで充分、ありがとさんでござんした。

   それでは皆さんお達者で

じいが退院して丁度一週間。人の出入りが多くなったさ中、まるで厄介もんはお暇(いとま)しますと言わぬばかりに行ってしまった。

あんなにヒトの手を嫌がったのに、別れの前夜、最後の力をふり絞り、トイレの屋根をよじ登り、手の中に飛び込んできた。

な~んだ元気じゃん。
と、暫くじっと動かず。初めてかな、彌助の優しいふんわりを味わうことができたのは。

安心させといて、明け方こっそり出て行くなんて( ;∀;)


やすけーーーー!!!!!!!
あんたのアルバム一個も出来てないのに、それでも行くのか!
この恩知らず!
おや、もしかして置手紙

 

お世話になりやした

令和4年2月28日

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